国産小麦専門のパン屋になったワケ
こんにちは!3代目の田中です。
『3代目のひとりごと』の実質初回。どんな話を書こうかな〜と考えていましたが、初回らしく、よくご質問いただく「タマヤパンはなぜ国産小麦のパン屋になったのか」についてお話したいと思います。
ご存じの方も多いと思いますが、タマヤパンは100%国産小麦を使った、国産小麦専門のパン屋です。
国産小麦のパン作りを始めたのは昭和50年代後半でした。今でこそ国産小麦を扱うパン屋さんも増えましたが、当時はほとんどお目にかかれなかったと思います。
タマヤパンもそれまで当たり前のように外国産の小麦でパンを作っていましたが、当時「食の勉強会」に参加していた先代社長が、参加者の方から「日本人なら日本の小麦でパンを作ったらどうや?」と投げかけられたひと言に端を発しました。
考えてみれば、世界にはその土地の食文化に合ったパンがあります。
フランスではクロワッサンやバケット。ドイツならライ麦を使ったドイツパン。イタリアならフォカッチャなど。どれもその土地でできた小麦で作ったおいしいパンです。それなら、日本でも日本のパンが作れるはずだ、と考えたのです。
近年、国内で消費される小麦の国産割合は約17%。その国産小麦のうち、パンに使われているのが約15%ほどです(※)。どうしてそんなに低いのかというと、農地の狭さもありますが、日本の高温多湿の気候が小麦作りに不向きで量産がしにくいことが原因のようです。さらに、できた小麦も外国産小麦に比べるとグルテンが少なく、ボリュームが出にくいという性質があります。(最近は、国内の気候に合わせた品種改良や栽培技術の向上も進んでいますが、なかなかスムーズにはいかないようです。)
※出典:農林水産省「麦をめぐる事情(小麦)」
「それなら外国産小麦を使えば?」とお思いかもしれません。ところが、実際に作ってみて、国産小麦独特の旨味に驚き、そこに惚れ込んでしまったのです。このことが先代の「日本の小麦でおいしい日本のパンを作ろう」という想いに火を点けました。
これは僕も同意見です。国産小麦は灰分が多くてミネラル豊富、更に小麦の風味が強いパンができるんです。国産小麦を使用していると言うと、ポストハーベストや食料自給率の問題に配慮してのことかと想像してくださる方も多いのですが、それより僕自身はこの独特の風味に魅せられて、今日まで国産小麦にこだわってきました。
ただ、前述したように、国産小麦のパン作りはとても難しく、すぐに量産体制に入れた訳ではありません。先代と職人による長く険しい道のりがあったワケですが……。
長くなるのでそれはまた、次のお話で!